第2章 澤村大地 『君ありての幸福』
でも初めて試合を見に行った時、
いきいきとコートの中を走る姿を見て
夢中になってる理由が分かったんだ。
応援しようって決めたっけ。
「そういえばお前、髪短く切ったよな?
長いのも似合ってたのに。なにか心境の変化か?」
「そんなんじゃないってば!
なんとなくだよ!
なんとなく!」
髪の毛…短い方が好きだって言ってたじゃん…。
う〜ん…もう少し切ればよかったかな…。
「そうか?これでも心配してるんだぞ!
なんかあったら俺を頼れよ?
さっきはあんな事言ったけど、
好きな奴出来たら応援するからな!」
はにかむように笑われたら
…あたし泣いちゃうよ…?
分かってるよ
この気持ちは許されないって
告げずにそっと消さなきゃいけないって
でももう張り裂けそうなこの気持ちを
隠せる自信がないよ…。
大きく深呼吸して唇を動かす。