過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第33章 ナナシの想い
仮眠室の扉を開けた時、ナナシが「あ」と声を上げたので、
エルヴィンはビクリと身体を強張らせた。
まさかこの期に及んでやはり止めるとか言い出すのでは、と
ナナシとの愛情行為が今まで上手くいった試しの無いエルヴィンは
少し疑心暗鬼になっていた。
ナナシはエルヴィンを見上げると、モジモジしながら
「お願いがあるのだが・・・」と話し始める。
「この部屋に入ったら・・・特に行為の最中で出る私の言動は
夢だと思って欲しい」
「何故?」
「・・・・一回限りの夢だと思ってくれないと、私は色々困る」
「どう困るというんだ?」
まるで本当に一夜限りの関係だと言われているようで、
エルヴィンは少し悲しくなったが、ナナシが一歩仮眠室に
足を踏み入れてしどろもどろになりながらも答えてくれた内容に
それも吹っ飛ぶ。
「だ、だって・・・何も言えなくなるではないか。
夢だと思ってくれないと明日から私は恥ずかしくて
お主と顔を合わせる自信が無い」
ズキューンとエルヴィンのハートは撃ち抜かれた。
しかもライフルではなく散弾銃で沢山の風穴を開けられたと
言っても良い程の破壊力だった。
つまりナナシは普段言えない事とか、気持ち良いとかそういう事を
口走ってしまう自信があるので、それをエルヴィンが夢として
カウントしてくれないと恥ずかしくて顔も合わせられないと
言っているのだ。