• テキストサイズ

FFⅨ Hi Betty! (Short)

第3章 今宵、眠る寝台での回想録


戸惑う彼女の姿は、怒られる仔犬によく似ていた。
我ながら言っていることが無茶苦茶だが、彼女は自分にも責任があると感じているのか、諦めたように桃色の唇を開く。

「………好き、です。」
「誰のことが?」

一瞬、彼女は目を見開くが、数秒、考える素振りを見せて再び声を絞った。

---…クジャ様のことが好きです。

伏目がちな彼女の頬は林檎のように紅かった。

「…人として、ですよ?」

彼女は付け加えるが、そうであるなら、何故そんなに顔を紅くする必要があるのだろう。
尋ねたくなる気持ちを我慢した。
次に言ってもらえなくなりそうな気がしたからだ。

「今はそれで充分だよ。」

今晩はいい気分で眠れそうだった。

「そうだ、これくらいならいいだろう?」

僕は思い出したように、彼女の顔周りの髪を掬い上げ、耳にかける。
そして、こめかみに唇を触れさせた。
彼女の肩が跳ねるのを感じる。

「挨拶みたいなものさ。」
「…私は、生まれてこの方、そんな挨拶をされたことなんてありません。」

恨めしそうに僕を見上げる彼女の頬は紅く染まったままだ。

「じゃあ、変えよう。僕の約束の証だ。」
「さっきは挨拶って言いました。」
「それじゃあ軽すぎるかい?不満なら考え直すよ。そうだねぇ、もっと濃密な方がいいかな?」

彼女はため息をついた。

「さっきので大丈夫です。」

引きつった表情が面白かった僕は、声をあげて笑った。
/ 27ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp