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FFⅨ Hi Betty! (Short)

第3章 今宵、眠る寝台での回想録


意地悪な返答だった。少し呆れられているのかもしれない。
まるで、僕がバーで店員の女を口説く重たい客みたいに見える。
しかし、実際に言ってることはそういうことだ。

「情緒がないねぇ。そういうことだとしたら、受け入れてくれるのかい?」
「クジャ様のことは嫌いではないです。…でも、少し強引です。」

頬を僅かに膨らませる彼女は、侍女としての顔ではなく、一人の少女としての顔をしているように思えた。

「…ただ、少し考えておきます。」
「へぇ。」
「少なくとも、身の振る舞いについては、見直しが必要かもしれないと思いました。ありがとうございます。」

意図せず礼を言われる僕には、シーツを取り替えていた時の、彼女の危うい雰囲気がどことなく薄くなったように感じられた。

「教訓にされてしまうとはね、困ったものだよ。」
「クジャ様はお綺麗なので、大多数の女性にはそれで通用すると思います。」

針穴から糸が抜けるかのように、するりと僕の腕を解くと、彼女は身を起こした。
ベッドの縁に腰掛けたまま手櫛で髪を整える彼女は、今晩も僕がつまらない記憶をリセットするために眠りにつくであろうベッドから、すぐに立ち上がってしまうのだろう。

今晩は、つまらない記憶、なのだろうか。

明晩になれば、僕はまた、身体のサイズに似つかわしくない慣れ親しんだキングサイズのベッドで、いつも通りに香を焚いて眠るのであろう。

「なら、僕が約束しよう。」

彼女は僕を見下ろす。
僕はゆっくりと起き上がる。

「僕がこんなことをするのは君にだけ。こういうのはどうだい?」

彼女はどうしようもなく困った顔をした。

「それは、浮気する男の常用句です…」

それから、一呼吸おいて彼女はさらに続ける。
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