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FFⅨ GrayLee (Long)

第4章 waver


ドレスの裾が縺れて歩きづらいと感じるのは着なれない証拠なのだろう。貴族達のパーティーに連れてこられたはいいものの場の空気に馴染めず、私は一人階段を上り人気のないバルコニーへと足を運んでいた。ドレスはこの前クジャが選んだもので、ビーズレースの際立つ純白の生地が主体の、ビスチェドレスだ。気が抜けたように私はバルコニーの柵に手をかける。空を見上げればミッドナイトブルーの所々に薄く雲がかかり、幻想的な空気を醸し出していた。此処は心なしか落ち着く。下は恐ろしく華やかだったから。一緒に来ていたクジャはどうしているかというと、顔馴染みの貴族達に挨拶して回っている。私のことも紹介したかったようだが、クジャの面子を潰しては困るので断った。

それはそうと、近頃気にかかっていることがある。パーティーで着るドレスを選んでもらったあの日からのことだ。“お願いだからシェリーは僕の人形にならないで”と抱き締められた後からは彼といるとぎこちなくなるのだ。これまでは、なんともなかったのかと聞かれれば、そんなことはない。しかし今日のドレスアップは抵抗があって、自分で着ると申し出たのだが、こだわりがあるとクジャが譲らないので結局全て彼に任せることとなった。その際もひたすらに平静を装おうとしたのだが、彼にはお見通しだったようで、ことあるごとに茶化された。前回との差が彼にとっては相当面白かったのだろう。しかしながら、クジャは恐ろしく大胆である。アレクサンドリア城で顔を会わせていた頃もそうだったが、彼は私を従者として扱っているようにはあまり感じられなかった。思い上がりも甚だしいかもしれないが、寧ろ口説いているかのようにさえ見える。単に彼はそういう性分で誰にでもそうなのだろうか。だから、彼がふと主であることを忘れそうになる。もしずっと傍にいたら私はどうなってしまうのだろう。そう考えるとなんとなく怖かった。クジャは仕えるべき人なのだ。私はその関係性を崩したくない。


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