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FFⅨ GrayLee (Long)

第3章 dependence




「じゃあ、君は僕に体を売れと命令されたらその通りにするかい?」

突如、クジャは艶やかな声で甘ったるく尋ねる。それは、私の倫理観を試すかの如く、耳元に余韻を残した。予想もしない切り返しに動揺する私に、クジャは何か含んだような微笑を浮かべている。しかし、答えなど考えるまでもなく決まっていた。私の中では主の命は絶対。それに尽きるのだ。

「うん、クジャに従う。」
「......そうかい。」

迷いなく答えれば、彼の微笑は冷め、哀しげに視線が外された。どういうことなのだろうか。度々垣間見るこの表情が何を意味するものなのか、私は未だ察することができない。この答えは、クジャには喜ばしくないものだったのだろうか。だとしたら何故。彼はドレスの着付けを続行するが、そこにはもう当初の楽しそうな表情は伺えなかった。

「終わったよ、今までの中でこれが一番似合ってる。」
「...うん。ありがとう。」

最早ドレスになんて目がいかなかった。鏡に映るクジャの弱々しい微笑みを視界の隅に確認してから私は目を伏せる。その瞬間、体が圧迫される感触に驚いて、ふと顔を上げればクジャの腕が腰のあたりに回されていた。彼は俯いている為、表情は伺えないが、この状況を説明するなら抱き締められていると表現するのが適切だろう。

「お願いだからシェリーは僕の人形にならないで。」

頭上からすがるように彼の声が溢れる。私を包み込む体温は今にも冷めてしまいそうだった。はっきりとした理由こそ分からないが、せめて目元に溜まった涙が頬を滑り落ちないよう、私はゆっくりと瞬きを繰り返した。


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