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兎は今日も虎を見張ります。

第1章 バニーの一年


あなたは正夢や予知夢、なんていうものを見たことがありますか?

まあ、普通でなくとも二回や三回は見たことがあると思いますよ、デジャヴとしてとかね。
よく言われてるウワサなんかだと、
「他人に言わなきゃ本当に実現する」
とか。

幸せな夢を見ると絶対に他人には言いたくなくなりますよね。
でもまず僕はそういった夢を見ない。見たとしても悪夢ばかり。思わず自分の過去を他人に言いたくなるようなものばかりです。

…と、言うのは置いといて。

今回はそんな下らないことを話しはじめた虎徹さんとの一日を紹介しましょう。



~~~



「おはようございます」
朝の挨拶は例え機嫌が悪くてもするのが僕なりの礼儀。それは虎徹さんも同じだと、僕は思っていた。
いや…勘違い、していた?
「…」
「…。虎徹さん?」
「…」
呼びかけても返事はない。
珍しくデスクに向かっていたので、何となく今日は仕事を真面目にやるのかなと思いそれ以上は話しかけないことにした。
あの虎徹さんがデスクワークをしているのだ。邪魔をするわけにはいかない。
それは相棒としての最大限の気づかいでもあった。
だがしばらくすると虎徹さんが急にソワソワしはじめた。デスクワークをしているにしても静かすぎるし、僕は途中から「この人のことだから仕事なんてしてないだろう」と思っていたので、再度声をかけた。
「どうかしたんですか?虎徹さん」
「ん!?あ、あぁ~いや、その…夢ってよ」
「はい?夢?」
「おう、夢。で、夢ってよ、他人に言わなきゃ叶うんだよな?」
「……さあ」
「なんっだよ!バニーなら肯定してくれると思ってたのに!」
「いや、肯定否定の前に…知りません、そんなこと」
冷たすぎたかな、と思い虎徹さんの表情を伺ってみれば僕の言葉は彼の耳に届いていなかったようでそれどころか先ほどより少ししなっているように見えてきてしまうほど、虎徹さんを取り巻くオーラが死んでいくのが手に取るように分かった。
「なんの夢を見たんですか?」
「それ言ったらおしまいじゃん!」
「まあ叶わないと思って言ってみてくださいよ」
「…まあ、良いけどよ…。楓にパパと結婚するー!って言ってもらえる夢見たんだよ」
…。
「叶いませんよ。ドンマイ」
「フォローしよ!?」

あまり大した夢でもなかったんですが、言ってもらえると良いですね。
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