第35章 第34セット
*優side*
重たい空気。
さっきから誰も喋ろうとしない。
岩「遅れた。」
柴崎さんと話していたはじめが帰ってきた。
岩「優。」
ただ名前を呼ばれただけなのに、心臓がドキリとした。
俯いていた顔を上げるとはじめが頭を下げた。
岩「すまなかった。あいつが手を出したのは俺がハッキリしなかったせいだ。俺が曖昧なままあいつと付き合ったりしたから、、、。」
違う。どれだけ好きで、どれだけ自分のモノにしたいと思っても、相手の幸せを壊しちゃいけない。
大切なものを奪ってまで自分を見てもらおうなんて間違ってるんだよ。
岩「それと、、、お前のこと、支えてやれなくてすまなかったッ、、、。苛ついてたんだ。何もしてやれない自分と、俺を呼ぶ俺の好きな声が聞こえないことに。」
本当に悪かったと謝り続けるはじめをどうすべきか、とても悩んだ。
傷ついた日々や苦しかった時が戻るわけじゃない。
それなら、、、
肩をたたいて顔を上げさせると両頬を両手でパンッと叩いて、ニッコリ笑う。
えっ?と驚くはじめ。
及「優がそれで許すって、岩ちゃん。」
岩「でもそれじゃ、、、」
及「一度決めたことを変えないのなんて岩ちゃんもよーく知ってるでしょ?」
岩「、、、ッあぁ。そうだな。さんきゅ、優。」
久しぶりにみんなで笑い合えた瞬間だった。