第6章 悪者センチメンタル
またすぐにロカはいつもと同じ微笑を浮かべるのだから、余計にたちが悪い。
「……じゃあ私、もう疲れているので寝ますね。 おやすみなさいさん」
から離れたロカは髪を耳に掛けては頭を下げてきた。 何事もなかったかのようなロカの態度は忘れろ、とに強制しているようではただ何度も頷く。
階段を登って行くロカの背中を見ながらは力なく、床に座り込んだ。
__知らなくていいことだったんだ。
は自分にそう言い聞かせながら、横目で気持ちよさそうに眠るギディオンを見た。
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結局が一睡もしない間に朝は来た。
毎朝の集会のためには玄関ホールに降りたのだが、ロカの姿を見てしまうとどうも気まずい。
「……おはようございます」
「おー、おはよう」
「姉ちゃんおはよー!」
「……おはよう」
「なっにその酷い顔。 寝てないわけ? 隈できちゃってんじゃん」
が玄関ホールに来ればロカ以外は大体挨拶が返って来た。 ロカも少し遅れて微笑むと、に近づいて来て隈を指でなぞった。
「おはようこざいます。今日は少し休んだらどうですか? 新しい環境に慣れられていないのでしょう」
「あ……じゃあお言葉に甘えて……」
__怖い。
先程のことが忘れられないのもあるが、明らかに今までのロカよりも穏やかではない。