第6章 悪者センチメンタル
「いや、特に何も! ただ凄く酔ってるなって思って見てただけなんで」
「え、そんなに酔った顔してる俺?」
「はい、真っ赤……です」
「呑みすぎちゃったかなあ。 何か今日は気分がよくてさ」
ギディオンはどこか楽しそうに息を吐いた。
「でもなんか物足りなくてさあ。 綺麗な踊り子でもいてくれたらもっと楽しいのかねえ」
それだけ呟くと、が何か言葉を返そうとする間にギディオンは満足気に瞳を閉じてしまった。 寝息が聞こえる。
もともと眠たそうに何度も瞬きをしていたので、はそのまま静かにソファーから立ち上がりギディオンを寝かせた。
普段の荒っぽい性格からは想像できない穏やかな寝顔。 長い睫毛は涙袋に陰を落とし、濡れた唇を時折もごもごと動かしている。
そんな寝顔にが暫く見惚れていると、古城の扉が重苦しい音をたてて開いた。
「おや……? さん? 起きてたんですか」
「あ……。 ロカさん!」
が振り返るとそこには珍しくスーツではないロカの姿があった。 ラフなTシャツに似合わない腕の包帯に視線がいってしまう。
思ったよりもの声は城内に響き渡り、ロカはシイ、と人差し指をたてた。
は申し訳なさそうに肩を竦ませるとおかえりなさい、と声を潜めた。
「ギディはまた酒を呑んだのですね。 迷惑は掛けていませんか?」
「いえ、全然。 あの、お姉さん大丈夫でしたか?」
が心配そうに顔を覗きこむと、ロカは眼を見開いた。