第6章 悪者センチメンタル
の足は自然に前へと踏み出そうとした。
「わっ?!」
すると呆然としていたせいかは階段に足を引っかけて、大きな声を出してしまった。
ギディオンは驚いた様子で階段のほうへと振り返る。
「……?! 大丈夫か……?」
階段からは落ちなかったもののやらかした、は覚束ない足取りで近づいてきたギディオンを見て苦笑いを浮かべた。
「ごめんなさい……大丈夫です。 何だか眠れなくて」
「びっくりしたなあ。 俺も眠れないから、ちょっと話そうか」
どうやら思っているよりギディオンは酔っ払っていないらしい。 洋酒の匂いがつん、との鼻を刺激した。
水が飲みたい、といえばギディオンが親切にそれが注がれたコップを持ってきてくれたのでは言われた通りソファーに座った。
ギディオンもの隣に足を組みつつ座る。
何故だかこれだけでの胸は高鳴った。
「ギディオンさんは、眠くないんですか?」
「俺ー? 俺はまだまだ。 ていうか今日みたいな良い日に寝るのは勿体無い気がするんだよなあ」
誤魔化すように何の脈絡もない会話をし掛けるが、どうしてもはギディオンの唇から目が離せずにいた。
「……、俺の顔に何かついてる?」
流石にその熱烈な視線に気づいたギディオンが首を傾げて尋ねた。
勿論はあなたの唇が魅力的で見とれていましたなど言えるはずもなく慌てて視線を逸らした。