第5章 悪者プルガトリオ
「姉ちゃん!」
「ひい?!」
突然、ダリルの高い怒鳴り声が突然図書室の静かな空気を劈いた。
慌てては手紙を背中に隠して、ダリルと時計を交互に見る。 時間はあれから1時間近く経っていた。
すっかり隠れんぼを放り出してしまっていたはダリルに頭を下げた。
「ごめんなさい! ほんとにごめんなさい! お城の中に珍しい物が沢山あったからつい……」
「もー! 僕ずっと蒸し暑い物置きの中に隠れてたんだよ?」
「お詫びにクッキー焼きますから……えと、ダメですか?」
そういうとダリルは膨らませていた頬を元に戻し、白い歯を見せてニッと笑ってみせた。
「いいよ、美味しいクッキー焼いてね!」
わーい、とはしゃぎ声を上げながらダリルは図書室を出て行ってしまった。
は手紙を胸元のポケットに入れ、時間を置いてから図書室を出た。
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「ただいまー、とダリル起きてる?」
深夜0時。
ギディオンの声で、は目を覚ました。
玄関ホールのソファーでダリルと一緒にクッキーを食べていたところから記憶がない。
疲れていつの間にか寝ていたのか、ソファーに横たわっていた身体には薄い毛布がかけられていた。
「おかえり! お金いっぱい奪えたの?」
「まあ、そこそこって所かなあ。 あいつらもヘタレな上に間抜けでさ」
ダリルがギディオンの声を聞きつけてか中央階段から降りてきた。 目が覚めて身を起こしたと目が合う。
「姉ちゃんおはよ!」
「ん、私お話してる途中で寝ちゃっていたみたいで……ごめんなさい」
「クッキーがすっごく美味しかったから、許してあげる」
するとメリルとダレルが大きな麻袋を引きずって入ってきた。
大人三人が入れそうなとても大きな麻袋はパンパンに膨らんでいた。
は拍子抜けした表情でそれを見つめる。
「それ全部お金ですか……?」
「いや、宝石も混ざってるよ。 大体4800万ってとこかなあ」
メリルは疲れているのかため息混じりに答えた。