第5章 悪者プルガトリオ
「……アイヴィー・シャムロック?」
親愛なるアイヴィー・シャムロック。
封筒には整った文字でそう綴られていた。 アイヴィー、図書室の隣にあった部屋のドアにも“Ivy”と掘られていたのを思い出す。
GrImMsのメンバー? だとしたら今はどこに。
は興味本位で封筒から一枚の紙を取り出した。 折り畳まれた便箋である。 紙にあまり文字は綴られていない。
親愛なるアイヴィー・シャムロック。
これが最後の告白になるだろう。
アイヴィー、君と出会えて本当によかった。 私は何て幸せ者なんだろう。
君は美しい私の恋人である。 私はそれを忘れない。
愛している。
こう書かれていた。 最後まで美しい字で丁寧に書かれている。
ラブレターの類に入るのだろうか。 は首を捻らせた。
ベタな文章の中に溢れる抑えきれない愛情。 それがの胸を甘く刺激した。
「アイヴィーさんのこと、好きだったんだろうな」
素直に綴られた美しい文章。 はアイヴィーという人物のことが余計気になった。
そもそもこれは誰がアイヴィーに宛てたのか。
何故か書いた人物の名前は書かれていない__。
ここにあるということはGrImMsの誰かが書いたのだろうか。 それとも違う人物から貰ったものをアイヴィーが持ってきたのか。
濡らしたのか、その手紙には所々水滴の色がありそこが褐色に変化している。
最後の告白、ということは書いた人物は亡くなったのだろうか。