第5章 悪者プルガトリオ
空腹が手伝ってはあっという間にフレンチトーストを完食した。
「幸せ……」
腹が満たされた満足感と、こんな美味しいものが食べられた幸福感。
は背凭れにくったりと身を預けお腹をさすった。
気づくとダリルもいつの間にか食べ終わっており頬杖をつきながら此方を見ている。 その瞳には子供が買ってもらった新しいおもちゃを初めて見るときのような好奇心がつまっていた。
悪意のないその目に見られることを恥ずかしく思うとは慌てて姿勢を正す。
「本当に似てるよねえ……」
「へ?」
「ううん! 何でもない独り言だからお気になさらずー」
向こう側でダリルが何かを呟くと、聞き逃したは首を傾げるもダリルはそれを二度も言ってくれなかった。
するとダリルは何を思ったのか勢いよく立ち上がった。
「ねえ! 姉ちゃん遊ぼうよ!」
「遊ぶ……? いいですけど私、頭使うやつはあんまりできないですよ」
天才少年の提案する遊びとは何なんだろうか。
クイズやタイピング? いやもっと難しいものなような気がする。 は自分が楽しめなさそうな遊びばかりを思い浮かべてしまい苦笑いを浮かべた。
「頭なんか使わないよ! 僕、隠れんぼがしたいな」
「え? 隠れんぼでいいんですか?」
「うん! ただし、姉ちゃんが鬼ね!僕隠れたいからっ」
隠れんぼ__ の的が外れた簡単で単純なゲームが提案された。 鬼が隠れた者を見つけるだけ。
は突然場を仕切りはじめたダリルの話を聞きながらぱちぱちと瞬きをした。 拍子抜けが丸分かりの顔で。
「制限時間は1時間で、場所はこの城の中だけね? あと個人の部屋と地下は入っちゃダメ!」
1時間でこの広い城内で小さな相手を探し当てる自信はには無かったものの、城を自由に徘徊できるというのは魅力的だった為了承するように頷いてみせた。
「じゃあ目瞑ってここで100秒ね! 数えたら出てきていいから!」
それだけ言い残すとダリルは食堂から勢いよく飛び出していってしまった。