第1章 悪者シンドローム
ギディオンは笑いながら長椅子から立ち上がり、未だに座ったままで間の抜けた顔をしているの乱暴に頭を撫で回した。
「はい、お前面白いから面接は合格。 これで素人じゃなきゃ完璧なんだがなー」
あっさりと言い放たれたその合格、という言葉にはぱあ、と表情を輝かせた。
「本当ですか?!」
「ああ。 一次はな、二次で生きてなきゃ何も意味ないんだけどさ」
「?」
そう言ってギディオンは懐からカバーのかかったサバイバルナイフを取り出してはに渡した。
始めてこのような戦闘ナイフを握るは動揺してえ、え、と言葉にならない戸惑いに目を泳がせた。
「手加減はしてもらうように頼むけど、どうかな」
ギディオンは苦笑いを浮かべながら食堂を出た。 も慌ててそれについていく。
どうやら試験には二次があったらしい。
サイトにはメンバーを募集していて、この古城にてオーディションを行うとしか書いていなかったので詳しいことは知らなかった。
「どうしよ……」
ここではじめては悩ましげな表情を浮かべた。 勿論今まで平和な家庭で特に難なく育てられたに戦闘経験はない。
しかもギディオンの言い方では生死が関わっているらしい。
がそうして悩んでいるうちに、いつの間にか会場であるパーティールームの前に着いてしまった。
ギディオンが扉を開けると同時に、鼻から頭を突き抜けるような異臭が舞った。
「うっ……!?」
そこに積まれていたのは、同じくオーディションを受けにきたのであろう大人達。
よく見れば過去に指名手配犯となっていた殺人鬼もちらほらといる。
「リーダー、それで最後?」
そして、その真ん中には血に濡れた顔を腕で拭う人の姿。
メリル・デンゼル__。
元々指名手配をされていた殺人狂で、どういうわけか常に女装をしている。 その愛らしい容姿に騙され、連れ込んだ男達が何人も殺害されているらしい。