第3章 悪者エレジー
「ほら、さっさと買い物いくよ。 僕あまりこの恰好好きじゃないんだ」
「あ、はいっ」
は慌てて鞄を肩にかけ、さっさと部屋から出て行ってしまったメリルについて行く。
目指すは古城から離れた商店街。古城がある森を抜けて汽車に乗っていくらしい。
「じゃあリーダー、行って来るよ」
「お、行ってらっしゃい。 あんまりに無理させないようにな」
「分かってるよ…… もう」
玄関ホールで何やらロカと話していたギディオンにメリルが声を掛けると、ギディオンは階段の方へ振り返った。
「も気をつけろよ。 こう見えてメリルはメンタル弱いとこあるから取り扱いは丁寧にな」
「あ、はい! 行ってきます」
「リーダー余計なこと言わないでよ!」
二人はそう言いながら古城を後にした。
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「……ねえ、メリルさん」
「は? 何。 あともうちょっと歩くペース早くして」
森から一直線に出来た街への道を早足で歩きながらはメリルに声を掛けた。
古城から門までの道は二人共無言で会話をしていなかったものの、がとうとうそれに気まずくなったらしい。
「メリルさんって髪、短かったんですね。 長い髪を結いてるのかと思いました」
「ウィッグだよ、あの部分は」
「でもメリルさん短髪だとかっこいいですね! 女装してる時は可愛いですけど」
「別に。 僕この恰好あんまり好きじゃないし嬉しくない。 ただこの恰好だと指名手配の写真とは違うから面倒くさくないだけ」
淡々とした調子で言葉を返してくるメリルはやがて深い溜息を吐いた。
「なんで僕が君にこんな事説明しなくちゃいけないの」
「あ……ごめんなさい。 言いたくなかったですか?」
「違う。 君と話したくないだけ」
その言葉はの心を鋭利に抉った。
ちらり、とさりげなくは俯きながら話すメリルの横顔を見る。