第3章 悪者エレジー
「よし……」
は着ていた服を脱いで、メリルから貸してもらった白いワンピースのような袖無しのドレスを着た。
シンプルでフリルの少ない質素な物だが前に着ていたものよりも見栄えがよく、は上機嫌な様子でくるくると回った。
「今日からがんばろっ」
鏡の前にいる自分に意気込むようにそういうと、は備え付けてあった洗面台で顔を洗い髪を整えてから部屋を出た。
「あ。 じゃん」
すると偶然隣の部屋から出てきたメリルが声をかけてきた。 じろり、との姿を見据える。
「ふーん……」
メリルは腕を組み、小さく声を漏らした。
は苦笑いを浮かべてついつい固まってしまう。
「大分マシになったんじゃない? 僕のドレスのおかけで」
「あ、ありがとうございますっ」
「別に褒めたわけじゃないよ。 調子乗るな」
ドレスの件もあり、はただこの場を笑って誤魔化すことしかできなかった。
頭を忙しく下げては謝り、言いたいことだけ言ってつんと顔をそらしたメリルが立ち去っていく姿を静かに見送った。