第3章 悪者エレジー
▼
__コン、コン。
午前8時。
は控えめなノックの音で目を覚ました。
「おはようございます、さん」
扉の前にはロカが立っており、腕には白いドレスのようなものが掛けられていた。
「あれ……私……」
「昨夜、歓迎会の途中玄関ホールの階段で気絶するように寝てしまったんですよ」
「え?!」
「その後ギディが貴女をここまで運んだんです」
は起き上がり、広い部屋をぐるりと見渡した。
少し古くて埃くさいもののロココ風の高級そうな家具が並べられ、は大きなベッドの中にいた。
歓迎会から記憶がない。
は思わず苦笑を浮かべて立ち上がった。
「私の為にやってくれた歓迎会なのに……失礼なことしちゃってすみませんでしたっ」
「いえいえ、相当疲れていた様子でしたしお気になさらず。もう少し休みますか?」
「や、いや! 起きます起きます!」
「そうですか。 では此方に着替えてください、メリルからです」
そう言ってロカは腕にかけていたドレスをベッドの上に置いた。 ドレスには一枚折り畳まれた紙が引っかけられており、はその紙を開いた。
“ださいから 僕の服貸してあげる”
は嬉しいような悲しいような、何とも言えない感情を覚えながらもドレスを受け取ることにした。
「ありがとうございます、ロカさん」
「いえいえ。 私は失礼するので着替え終わったら昨日の玄関ホールへ来てください」
「はい」
「……あ、あと此処は貴女の部屋なんで自由に使ってくださいね」
ロカはそう言い残してさっさと部屋から出て行った。