第1章 再開
それからしばらくたってのことだ。
私は突然、夜兎の星(ここ)を離れることになる。
いつものように、神威は乱菊の住む屋敷の前へやってきた。
その日はいつもと違って、辺りが騒がしかった。
ふと、女中達の話が聞こえてくる。
「……………どうやら暗殺だったらしいわよ」
「あら…当然じゃない?元々夜兎族ではないんだし…。
いくら旦那様のご寵愛を受けていたからって…」
「毒殺だったらしいわ。娘は逃がしたらしいけど。
きっとこうなることを予測して準備していたのよ。そうでなければ…………」
母親を暗殺された彼女が仲間と共に屋敷を去った後だった。
それはあまりに突然のことだった。
(どうして……)
(なんで、何も言わず1人でいっちゃうんだよ…!)
(オレが弱いから?乱菊を守る力が無かったから!?)
母の死後、私は母の故郷である地球へと向かった。
神威に何も言わずに出てきたことは後悔している。
彼に別れを一言でも言いたかったが、それは許されなかった。
自分にもっと力があれば、純血の夜兎族であれば、私はこの星でもっと普通に暮らしていけたのだろうか。
その時の私達は、大切なものや自分の居場所すら守れない、力の無い子供だった。