第1章 再開
それはまだ、乱菊が夜兎の星に住んでいた頃。
屋敷から離れた小山。
てっぺんにある大きな木の下に腰掛けると、ここからは夜兎の街が一望できる。
乱菊はひとけの無いこの場所が気に入っていた。
「乱菊~~!」
声のする方を見ると、向こうから男の子が翔けてくる。
「!」
男の子は間近までくると、乱菊の顔を見てぎょっとした。
「また…虐められたの……」
気遣うように見つめてくる神威から、乱菊は視線を逸らす。
顔には殴られてできた痣が幾つもあった。
「仕方がないよ、私は妾の子だもの…」
乱菊の家は夜兎族の中でも名家であった。
だが彼女の母は正妻ではなく、妾である地球の女との間にできた子供だった。
力を第一とする夜兎族の間において、人間の血を引く彼女は異端であり、蔑みの対象となっいてた。
「あいつら…女中のくせに、手をだすなんて!!」
「……」
諦めとも似た表情で息を吐く。
それは夜兎族の中で生きていく上でのルールであると、乱菊も理解していた。
隣では神威が自分のことのように怒っていだが、乱菊にはそれが不安だった。
この幼馴染にはちょっと好戦的すぎるところがある。
名家の当主である父に手を出す無謀者はいないが、もし戦いを挑めば、どうなるかは目に見えている。