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プロポーズされてみませんか? 【短編集】

第17章 キライ、でも、スキ 【黄瀬涼太】


アーティスト達の歌が終わり、残るはそのスペシャルゲストのみ。

ステージ中央でアナウンサーがマイクを持ってカメラに向かって言葉を発する。

「それでは最後、スペシャルゲストさんの登場です。春乃さんお願いします!」

アナウンサーの言葉と共にギターを持った春乃が舞台袖から現れた。

「え!?春乃!?」

驚いた俺は春乃の名前を呼び、前のめりになって食い入るようにテレビを見た。

「春乃さん、今日は新曲の発表ということで来ていただきましたがどのような曲なんでしょうか」

「この曲を思いついたのはつい数週間前の事なんです。数週間前に大切な恋人喧嘩をしたんですよ」

春乃の口から出た「恋人」というワードに会場がざわつく。
そう、俺も春乃も恋人と言うことは隠していたし、恋人がいるとも公言していなかったから、皆が驚くのも無理ない。

「今思えば、些細な事だったのかも知れません。でも私にとってはショックな事で、ついつい意地になって彼の事を避けちゃったんです」

一言一言、ゆっくりと話す春乃を見て胸が締め付けられる。

「寂しかったんですよ。お互いに仕事で忙しくてただでさえ一緒にいられる時間が少なかったのに喧嘩もしちゃって。それでふと歌詞が思い浮かんで、それを夢中で紙に書き出して。いつの間にか曲になってました」

「では今日歌ってくださる歌はその恋人さんに向けての歌ということですか?」

「はい」

画面の向こうで少し照れくさそうに笑った春乃の顔を見て嬉しくなる。

「それでは春乃に新曲歌っていただきましょう!曲名は【これが私なの】」


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全力で歌を歌い終えた春乃。
歌詞、歌声から伝わってくる春乃の気持ちに胸が痛くなるのと同時に嬉しさで胸がいっぱいになる。

そして興奮冷めやらぬ中、春乃はマイクをスタンドから外して持つとカメラに目線をおくる。

「…この場をお借りしますね」

春乃がそう言えば熱狂していた観客達が徐々に静かになる。

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