第2章 嵐の夜の訪問者
「…え?」
ドアの前に立っていたのは大男で、肩から上が完全に見えない。
直後に大男は体を屈め、ドアから顔を覗かせる。
す
「っ…!」
顔を見た瞬間息を飲むと同時にどこのサーカス団から来た!と思った。
癖のある金髪。
耳近くまで引かれたルージュに奇抜なアイメイク。
自分じゃなかったら完璧に悲鳴を上げてただろう。
「…驚かせちまったか?」
「あ…!」
男の声に我に返る。
「俺が信用できないならこいつだけでも……いや、やっぱりやめとくか。せめて毛布だけでも貸してもらえねえか?」
男の腕の中には少年が抱きかかえられ、荒い呼吸を繰り返している。
そんな状態でこの嵐の中を彷徨わせることなどメイサに出来るはずもなかった。
「入って。すぐに部屋を暖めるから」
「…ありがとう…」
「っ……!」
お礼を言った男の顔が嬉しそうな、でも今にも泣き出しそうで思わず心臓が跳ねた。
「ほら、早く入って。タオルを持ってくるからその子はソファーに寝かせて」
そう言ってバスルームに行こうと振り返った直後。
ゴン!
「イテッ!」
派手な音とその声に振り返れば男は頭を押さえて蹲っていた。
背が高いのだから気をつけないと頭を打つことくらいわかるだろうに。
(ドジな人…)
呆れながらバスルームに向かった。