第9章 ヤキモチ
「…もう、いいんだよ。」
「……何がです?」
横に座っていた紅覇くんが、突然話し出した。
それには主語がなくて、最初は何を言っているのか分からなかった。
「シェリーはさ、いつも僕の我が儘を聞いてくれたよね」
「…」
「シェリーはさ、此所にきてから、どんな気持ちになった?楽しい?悲しい?」
「……シェリーは、さ。最初っから、此所から出たいって言ってたよね」
「……紅覇、くん…?」
「……帰りたかったら、いつでも帰っていいんだよ」
そう言ってやわらかく笑う紅覇くんに、私はかける言葉もなかった。
「紅覇くん…き、急にどうしたんですか?いつもの紅覇くんらしく、ありませんよ…?」
「…ねえ、シェリー。僕さ、前から思ってたんだ。シェリーってさ、僕の言うことばっか聞いてて楽しいのかなって。まあ確かに、それなりにシェリー自身の意見を言ってくれることはあっても、シェリー、楽しくなさそうだった。」
「だからさ。……もう、いいんだよ、シェリー」
__僕のことなんか、気にしないで、__
力なく笑った。
その目には、そんな意味が込められている気がして。
弱々しく告られたその言葉に、
その仕草に。
無性に、腹が立った。
「……なんですか、それ」
俯いたまま、拳を握りしめて、怒りを込めて言った。
「…ゆ、誘拐なんかして、散々人を振り回しておいて、今更…なんなんですか…!」
「その態度といい、表情といい、ほんとに今日の紅覇くんはどうかしてます!いつもの語尾を伸ばすあれはどうしたんですか!そんな、レイプ目みたいな目をして、なんですか?ヤンデレですか!?ふざけるのも大概にして下さい!!」
私がどれだけ叫んでも、紅覇くんは俯いたままで何も話さなかった。
「……っ…紅覇くんなんか、大ッ嫌い…!もう、知りませんから……!!」