第3章 一つ合宿所の屋根の下
「これな、俺のおじさんから聞いた話なんだけど・・・・。高1の時、親戚の集まりで食事してたんだよ。その時聞いた話でさ。
おじさんがさ、最近変な夢を見るって言うんだよ。三日に一度くらいの頻度でね。夢の内容は、おじさん、タンスの中に居るんだって。
両開きでさ、長方形のタンス。シャツだとかコートだとかが掛かってる中に体育座りで。何でそんな中に居るのかっていうのと、“何か”から隠れてるんだってさ。
でも、何でそういうことになったのかとか、“何”から隠れてるのかとか分からないんだ。ほら、そういう夢見ない?もう頭の中に設定が出来上がってて理解してるっていう感じの夢。
で、とにかくおじさんは隠れてるの。タンスの中で震えながら隠れてて、その“何か”に見つかったらヤバいっていうのも分かってたんだ」
スガ先輩の身振り手振りの表現、間の取り方、口調に声量を巧みに使いながら話していく。無意識の内にスガ先輩の話に引き込まれていき、気付けば掌に汗を滲ませながら話に聞き入っていた。
「でね、しばらくすると、タンスの外から、」
───────パンパン、パンパン
「って手を打ち鳴らす音がしてくるんだ。小さい音だから遠い所からしてくるって分かったんだって。それが一、二回続いて夢は終わったんだ。
でも、また二日くらい経ってから同じ夢を見たんだって。それが何度か繰り返されて、ある日の夢でおじさん気付いたんだよ。
あ、この手を叩く音、どんどん近付いてる
って」