第3章 一つ合宿所の屋根の下
行くぞー瀬戸と田中先輩は私を促すが、すっかりビビって足が竦んでいる私は上手く動けない。どうしようホントにどうしよう知らない人って一体…。日向は田中先輩の服の裾を掴んで必死に引き留める。
「け、けど絶対見たんですっっ!ホントですっ…!」
「い、一体どんなの…?」
「お、おいおい!瀬戸も信じてるのか!?」
「だ、だって…」
田中先輩は私と日向を交互に見ると、田中先輩の顔も僅かに青ざめたのが分かった。どうやら只事ではないと思い始めたようだ。
「そ、そいつ…どんなやつなんだよ…」
田中先輩は震えを噛み殺す様に、日向にゆっくりと
問い掛けた。すると日向は暗い表情でぼそりと答えた。
「なんか…こども……」
その瞬間私と田中先輩の全身に寒気が駆け抜けた。日向は強く震えながら恐ろしい言葉を口にしようとする。
「ま、まさかっ…!まさかっ…幽れ、」
「やめっ、やめなさああああああああああい!!!」
田中先輩グッジョブです。あんな言葉を本物がいるかもしれないこの状況で口にさせるなんて溜まったもんじゃない。召喚、ダメ絶対。
「た、田中先輩…ど、ど、どうし…」
「おち、落ち着け瀬戸!俺ら2人がいるから!
つか見間違いだっ!窓に映った自分とかだっ!よし!
大丈夫だ!すぐ皆のトコ戻ろう!大丈夫だ、大丈夫!大丈夫大丈夫大、」
───────ヒタッ
「ひっ…」
「「!!?」」
背後から柔らかな足の肉が床に触れる音がする。その瞬間日向の顔が恐怖に引き攣る。その顔と音の両方に恐怖ボルテージが上がり始める。
日「ギャアアアアアアアアアアアッ!!」
田「うわあああああああああ!?」
私「キャアアアアアアアアアアアアアアア!?」
日「でたあああああああああああああああ!!」
私「うそうそうそ帰る帰る帰る帰る帰るッッ!!」