第3章 一つ合宿所の屋根の下
「おっ!あれ日向じゃね?」
前方に陽光の様に温かな髪色でふわふわした頭が見えてきた。あれは間違いなく日向だが、どこか挙動不審にそわそわしている。
「次、1年風呂だぞー」
田中先輩が声を掛けるが、気付いてないのか変わらずそわそわしている。
「どうした日向」
「ひっ!」
ビクッと明らかに怯えた反応を日向は見せた。私と先輩は顔を見合わせ首を傾げるばかりだ。
「な、何だぁ〜…田中さんに瀬戸か…」
「おいおいどーしたよ。何か変なモンでも拾い食いしたんかー?」
食堂もあるこの室内で拾い食いってそれどんだけ野生児なんですか。日向は真っ青な顔で、震える唇を開いて言葉を漏らした。
「し……」
「「し??」」
「知らない人が……居るんです…。この建物の中に…」
「し、知らない人…?」
指先の血の気が引いていく感覚を覚えた。何それちょっと今 夜真っ只中だよ妙な事言うなよお願いします。僅かに震える声で日向の言葉を反復した。冗談だよーと笑顔で言ってくれると信じて。
「うん…知らない人…」
全く冗談なんかじゃなかったです本当にありがとうございましたコンチクショウ。
「はあ!?んなわけあるか。今日ここ使ってんの俺達だけだぞ」