第1章 プロローグ
目の前の事は現実なの?
私は、瞬きをする事さえ忘れて、目の前の現実を認識しようとした。
付き合ってもうすぐで2年になる、彼氏の涼太がある日突然、私とのデートの待ち合わせ場所に1人の女の子を連れてきた。
初めて見る子はふわふわした、いかにも女の子ですって感じの子。
私はおそるおそる、口を開いた。
サキ「えっと…誰?かな、その子。涼太の友達?」
少し顔を歪めた涼太は、下を向いたまま答えた。
涼太「違うよ、この子は優子。
俺たち、3ヶ月前から付き合ってる。」
サキ「え?どういうこと?じゃあ私は一体何なの?」
息が止まりそう。
疑問しか出てこない。私は彼女じゃないの?
涼太「この3ヶ月間、本当にごめん。
サキがここ最近忙しくて、まともに会えなかった時に出会って、優子がその寂しさを埋めてくれたんだ。
高校生の2年ってすごく長くて、信頼も厚かったけど、その分気持ちは薄くなったのかもしれない。
ごめんな。俺はお前と、この先一緒にいれないし、一緒に大人にはなれない。」
普段は私の尻に敷かれて、何も文句も言わなかった涼太。
2年も一緒にいたのに、涼太のこんなしっかり話す部分なんて知らなくて、それがすごく悲しかった。
それに、そんなこと言われたら私は何も言い返せない。
涼太は何があっても私のことが好き、そう信じ切って、何ヶ月も放置したのは私。
サキ「もういい…。さようなら…」
涙をこらえるのに必死で、これだけしか言えなかった。
ドラマならこういう時、いろいろ文句を言って、相手の女の子にもいろいろ言って、すっきりして帰るんだろうな。
何も言えないなんて情けなかったけど、私は近くにあったテレビ局のトイレに駆け込むくらいしかできなかった。