第14章 媚薬
「…っ」
私は力が全身から抜け、べたりと座り込む。
「っ…ぐすっ…」
分かっていた。
カエデが隠し事をしているなんてことは。
どんなバカでも分かる、とても簡単なこと。
むしろそれ以外にカエデがあの時、あんな反応をした理由は思い浮かばない。
それなのに私は、現実から目を背け、カエデは隠し事をしていないと言った。
「っはは…馬鹿だな…」
私は誰もいない静まり返った教員室で自虐的に呟いた。
――ガラッ
「ほんとに馬鹿だよ、望乃は」
扉が開く音と同時に聞き慣れた声がした。
「…カルマ…くん…?」
私は振り返り、その声の主の名前を呼ぶ。
「望乃、馬鹿すぎ」
ゆっくりと進みながらカルマくんは言った。
「俺が望乃を裏切るなんて殺せんせーが存在していることよりも有り得ないことだよ」
カルマくんは呆れたように言いながら私の前でしゃがんだ。
「…カルマくんはそうでも…カエデは…」
「確かに茅野ちゃんの様子はおかしかったみたいだけど、誰にだって隠したいことはある」
「で、でも…!んっ…」
カルマくんは私の唇に人差し指をくっつけた。
「望乃も俺に言ってないこと、あるよね?」
「えっ…」
私がカルマくんに言ってないこと…?
「望乃が実はかなりヲタクってこと」
――ギクッ
「…だ、だって…嫌われたくなかったんだもん…」
一般的にヲタクとかキモイって言われてるし…
「はぁ…馬鹿だね、望乃は。そんなんで嫌いになるとでも思ってたの?」
「そ、そんなんって…んっ!」
カルマくんは私を自分の方に引き寄せ、キスをした。
「んっ…カルっマくん…ここ…がっこ…」
私は抵抗したくてもカルマくんの力に勝てるはずもなく、思うがままにされる。
「んんっ!!」
カルマくんが舌を入れてきて、よりキスが激しくなる。
「んんっ…ふぁ…ふぁめぇ…」
私の言葉を聞かずにただキスをしていくカルマくんの顔は無表情だった。
あぁ…もしかして、ビッチ先生の言う通りなのかもしれない。
カルマくんは自分の性欲を満たすために私と付き合ったのかな…
もしかしたら、そうなのかな…
だから、お兄さんが私の裸見た時も怒ってなかったのかな…
だから、今も…無表情なの…?
カルマくん。
私の目から、一筋の涙が流れた。