第9章 イリーナ・イエラビッチ
「さぁ、教室に戻りますよ」
「「はぁーい」」
みんなは殺せんせーに言われ、教室へ行ったが私はこっそり隠れてビッチ姉さんの様子をうかがっていた。
きっと、殺せんせーはそのことを分かっている。その上で私に何も言わないのだ。つまり了解を得たということだ。
「っ…!っ許せない…こんな無様な失敗初めてだわ…!この屈辱はプロとして必ず返す…!」
「・・・」
私はこっそりとその場を去った。
(『プロ』…ねぇ…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~教室~
――カタ、カタ
さっきの授業よりも強めにタブレットを叩く音が教室内に響く。
「・・・」
みんなもイヤな雰囲気をかもし出している。
「あぁ!んもう!なんでWiFi入んないのよこのボロ校舎!」
苛立ちをぶつけるようにビッチ姉さんは言い放った。
「必死だね、ビッチ姉さん」
嘲笑うように赤羽くんが言った。
「あんなことされちゃ、プライドズタズタだろうね」
わざわざ感に障るようなことをホイホイと口に出す赤羽くんに少し苛立ちを覚えた。
(確かにあの人のことは嫌いだけど…今のビッチ姉さんはさすがに可哀想だと思うけどな…)
「…先生」
口を開いたのは学級委員長の磯貝くんだった。
「…なによ」
睨みつけるように言葉を返すビッチ姉さん。
「授業してくれないんなら、殺せんせーと交代してくれませんか…?俺ら今年受験なんで…」
きっと理由をつけるために受験の話を持ち出したのだろうがそれが仇となった。
「っは!あの凶悪生物に教わりたいの?地球の危機と受験を比べられるなんて、ガキは平和でいいわねぇ?それに…聞けばあんたたちE組ってこの学校の落ちこぼれだそうじゃないの」
「「っ・・・!」」
「勉強なんて今更しても意味無いでしょう?そうだ、じゃあこうしましょう。私が暗殺に成功したら1人500万円分けてあげる。無駄な勉強するよりずっと有益でしょう?」
――プチッ
みんなの線が切れた瞬間だった。
「だから、黙って私に従え―――」
――コン
消しゴムが黒板に当たった。
「出てけよ」
前原くんの低い声が静かな教室に響いた。