第1章 夢
執務室からの帰り、背後から叫びながら走ってくる人がいた。
「エミ~!」
そう呼ばれて振り返るや否や抱きついてきたのはハンジだった。
「もう心配したよ~!
怪我は大丈夫!?
痛くない!?」
思いっきり抱きつかれて痛くないと言えば嘘になるが、あまりにも心配させてしまったのかと思うと嘘を言ってでも痛くないと言うべきかと悩んでいると
「そんな勢いで抱きつかれて痛くない訳ねぇだろ、クソメガネ」
リヴァイが今自分が戻る予定だった自室の方から歩いてこっちにやってきた。
「だってあの高さから落下したんだよ!?
軽症で済んだのが奇跡だし、まさか寝不足だったなんて誰が分かるって言うの!」
「分からなかったのはお前だけだ」
リヴァイは眉間に皺を寄せて答え,明らかに不機嫌であるのは分かった。
「俺はこいつと話がある。
分かったら離してやれ、奇行種」
「やれやれ、相変わらずだね~リヴァイは」
そう言ってハンジは抱きついていた手を離しエミの背中を摩った。
「無理したらダメだよ?」
優しく笑うハンジに笑顔で答えると半ば強引にリヴァイに手を引かれその場から離れた。
エミは自室に帰るのかと思っていたが連れて来られたのはリヴァイの私室だった。
リヴァイがドアを開けると入るように促され、恐る恐る入る。
さすが潔癖なリヴァイなだけあって部屋の中は必要最低限の物しか置かれておらず、掃除もきちんとされていて綺麗だった。
「そこに座れ」
リヴァイは顔でソファーを指す。
エミの隣に腰をかけたリヴァイは静かに話してきた。
「エルヴィンから聞いたか?」
エミは小さく頷くとリヴァイは深くため息をつく。
「あいつの事だ。
どうせ俺が提案したという事も話したんだろ」
そう言われて頷くしかなかった。
「この事は俺とエルヴィンだけの秘密だったんだが...」
突然口篭ったのでリヴァイの方を見るとリヴァイは眉間に皺を寄せて真っ直ぐと前を見つめていた。
「どうかされたんですか?」
リヴァイの様子に違和感を覚えた。
あの時と同じだ。
父が仕事と言って家を出て行った時と。
するとリヴァイはエミのほうに振り返り静かに話し始めた。
「お前の父親の事だ」
リヴァイから父の話をされる事に驚いたが、そのまま話し続けた。