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第8章 憲兵


その日の昼に中央憲兵の幹部が王の元に招集された。

王の横に立つエミをケダモノを見るような目で見る。

「お主らはユベラを良く思ってないじゃろう。
そこでわしから提案じゃ。
今後ユベラに対する態度を兵士達皆に改めて貰おう。
わしはお主らよりこの者を信用しておる」

「お言葉ですが昨日来たばかりの兵士を信用なさるのはどうかと」

エミは発言した兵士を見た。

昨日名前を教えてくれなかった人物だ。

「お主の言う事は分かる。
じゃが、ユベラがわしの側近である限り立場はお主より上なのは分かっているじゃろ?」

幹部達の表情はあからさまに嫌そうだった。

昨日来たばかりの若い女兵士をいきなり信じろというのには無理がある。

「率直に言わせて貰う。
兵歴はお主達の方が長いが、いざわしの命を守らねばならなくなった時守れるか?」

「勿論、全力でお守りします!」

「中央第一憲兵団長のジェル・サネスか。
いくらお主でも無理じゃ。
ユベラは調査兵団の元兵士長補佐。
戦闘能力や知識は格段にお主より上じゃ。
他の者もその事を心に刻むが良い」

そう言われて舌打ちをした。

「私からも発言してよろしいでしょうか?」

エミは王に尋ねると「構わん」と言われ、1歩前に出て堂々と振る舞いながら言った。

「失礼を承知で話させて頂きます。
あなた方はこの様な場所で過ごしていますが、実際に巨人と戦った事はありますか?
同じ兵団の仲間を巨人によって失いましたか?
もし私に不服があるようならいつでも仰って下さい。
ここでは剣を交える事は出来ませんが、格闘術にてお相手します。
あと…」

エミは無表情で冷たく言い放った。

「女だと思って甘く見ない方が身の為です」

その言葉に幹部達が動揺したのが分かった。

それを見てエミは笑う事無く王の横に戻る。

そこには調査兵団に居た時のエミの姿は無かった。

冷酷で冷たく言葉を言い放つ、通称人類最強の女兵士の姿だった。

幹部達が部屋を出て王と2人になるとエミは王に向かって敬礼をした。

「でしゃばってしまい申し訳ありません」

「構わん。
それにしてもあやつらを黙らすとは素晴らしい事じゃのぉ。
父親にそっくりじゃわい」

王は満足そうな顔をしていた。
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