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第3章 何故


まだ太陽も昇っていない朝方な為、自然と足音を立てずに急ぎ足でデッキへと向かった。

到着するとベンチに誰かが座っている。

「時間どうりだな」

紛れもなくリヴァイだった。

「お待たせしてすみません」

そう言ってエミはリヴァイの横に座る。

(どう話を切り出したらいいんだろう...)

エミが悩んでいると痺れを切らしたのかリヴァイが少し荒々しく沈黙を破った。

「返事はどっちだ」

そう聞かれてエミはリヴァイを見ると鋭い目つきで睨まれていた。

そんな顔で見られたら普通の兵士なら黙り込んでしまうだろう。

しかし、その顔を見てエミは何故か安堵した。

仲間の期待、仲間の死、そして人類最強と言われ、その希望を背負っている。

それは彼にとってどんなに重圧をかけているのだろう。

その重圧を少しでも軽くさせれるのであれば...

「私なんかで良ければ...その...お願い...した...いです」

唐突に出た言葉だった。

ただ兵長の苦しみを少しでも緩和出来ればいい。

するとリヴァイはエミを抱き締めた。

そしてリヴァイから発せられた言葉はエミにとって意外すぎる言葉だった。

「お前が何を考えているのかは何となく分かる。
お前の事だ。
どうせ俺の事を思っての事だろ。
だがな...」

リヴァイは少しエミから離れるとお互いの鼻がつくかつかないかの距離で優しく言った。

「エミ...
お前に無理はさせない。
そして俺の女になった以上、お前を守る。
誰にも渡さない。
だから悩みがあれば俺に言え。
どんな事でも俺は受け止める」

その言葉を聞いて彼女は微笑みながら涙を流した。

父が亡くなってからエミは孤独だった。

兵団に入り仲間ができ、話をして笑いあっても心は寂しかった。

それを今、リヴァイが受け止めようとしてくれている。

「何故泣いてんだ」

「嬉し涙です」

そう答えて2人は口付けを交わした。
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