第3章 何故
翌日、新しい部屋に荷物を移動させる為にエミの班が躍起になっていた。
「班長、これはどこに置けばいいですか?」
「あー、適当でいいよ!
荷物さえ運んでくれたら後は自分でするから」
エミは嬉しかった。
最初は自分1人で荷物運びをする予定だったが、班員が手伝うと言ってこうして手伝ってくれている。
「良い部下に恵まれたな」
「兵長!」
新しい部屋の入口にリヴァイが荷物を持って立っている姿を見て驚いた。
「兵長にそんな事をさせる訳には...」
「誰にもやるなと言われた覚えは無い」
エミの言葉を遮る様に言う。
確かにそうだったが、部下の引越しの手伝いをするとは思ってもいなかった。
むしろ、1人でやるつもりだったので班員が手伝ってくれている事にも気が引けていたが...
「お前の荷物は何故こんなに本が多い」
確かにエミの荷物はほとんどが本だった。
非番の日は1人で街に出掛け、気になる本があれば買い漁る癖がある。
そうなったのは調査兵団に入ってからで、仲間と雑談するのも楽しいが、部屋で静かに読書をする方が何も考えずに済むから好きだった。
「班長、これで全部終わりました」
「ありがとう。
今日は非番なのに付き合ってくれてごめんね」
「いえ、それは俺達が申し出たことなので気にしないでください!
それより...」
部下の1人が悲しそうな顔でこちらを見る。
「兵長の補佐になるという事は、もうエミさんと同じ班でなくなるという事ですよね」
「まぁ、そうなるね。
でも皆は十分強くなったし、私が居なくなっても大丈夫だよ」
そう言って笑顔を見せた。
笑顔を見せる事...
これがエミにとっての1番の慰めだった。
部下が新しいエミの部屋から出て行った後、リヴァイは荷物整理を手伝ってくれた。
本棚に本を片付けている時、リヴァイは聞いた。
「本当にこれで良かったのか?」
「団長の決定には逆らえませんから」
リヴァイは驚いた顔で彼女を見る。
「お前が納得したから引き受けたんじゃねぇのか?」
「納得ですか...
はいっと言えば嘘になりますが、断れば団長命令で補佐にさせると...」
リヴァイの表情が変わり明らかに怒っている事が分かる。
そして無言で部屋を出て行った。