第3章 帰りたい場所と描く未来
『リンは…違う。』
『リンはこのまちにいるべきじゃない。』
『なんで!?』
『お前は特別なんだ!』
兄の突然の言葉にあたしは取り乱した。
『特別って何?!あたしがなんだっていうの?!
あたしはこのまちで生まれ育った小嶺リンよ!他の誰でもないんだから!』
特別、という言葉にあたしは敏感かつ、嫌いだった。何故なら…
『それはわかっている。お前は神社の娘で、俺の妹だ!……15年前海岸にすてられていたお前をまちのみんなが助けてから、お前はこのまちの大切な一員だ。』
…あたしは本当は捨て子だったからだ。
海岸に置き去りにされ、危うく波に連れさらわれるところだったのを漁師さんに助けてもらい、そしてあたしは今の親に育ててもらった。
両親は実の子のように育ててくれた。厳しくしつけられる愛も、何かできたらほめてくれる愛も…いっぱいもらった。
まちのみんなもあたしを除け者にすることなく可愛がってくれた。
…金髪、青眼のあたしを。
見た目が周りと違うというのに、正体不明だというのに、
まちの大人やクラスメイトは何の特別視をすることなく、分け隔てなく、無償の愛をあたしに与えてくれた。
特別、という言葉は差別されているようで嫌いだったが、まちのみんなはそんなことすることはなかった。
なのに、身近な兄に特別といわれ、あたしは暴れたが、兄に肩を抑えつけられ逃れることができない。
『リン!俺はお前を差別しているわけじゃない!…でも、俺はお前の才能をこのまま無駄にするのが嫌なんだ!
…お前は頭もいい。本当なら進学校でトップを狙えるくらいに。でも、お前はまちが好きだからと一番近い高校を選んでる。それに音楽の才能も…!
リンが歌うと神々がざわめくんだ。。。』
神々がざわめく、、、
同じことを何回かハヤト兄にいわれたことがあった。
昔、兄と一緒に山で迷子になったことがあった。
あたしが泣いておうち帰りたいというと、神々…八百万の神があたしを道案内するようにざわめき、家までの道を風を使って案内してくれたという。
あたしは神々なんて兄と違ってみえないからわからないが、ハヤト兄がいうには、何度もあたしは八百万の神に助けられているという。
こんなのは珍しいことらしい。