第3章 帰りたい場所と描く未来
覗きこむと同時に中にいる人と目があってしまった。
ヤバイ、とは思ったが、気づかれた以上どうしようもない。
あたしとハヤト兄は、軽く会釈をすると、
目があった人物は外へとでてきた。
『おっ!ハヤトくんに、リンちゃんじゃん!!』
元気よく挨拶してくれるその人は
まちの青年団の人で、三十代の中ではリーダー格の人だ。
『林さん、こんばんは。』
あたりさわりのない挨拶をする。
できればこの場から早く離れたい。
何故なら…
『あんら〜!ハヤトくんにリンちゃんでねぇの!』
『おっ!今年の祭の主役でねぇか!ちっと、こっちゃさ、来い!』
…とおじさんやおばさんたちに家の中へと引きずりこまれるから。
世話好き、おしゃべり好きな住民は、
ほいほいと人を家にあげるし、
逆にほいほいと人の家にあがる。
ましてや今年はあたしが神楽舞の主役になったものだから、いつも以上に近所から声がかかるのだ。
ありがたいことだが、これでは家にいつまでたっても帰れない。
祭の準備があるからと丁寧に断ると
これだけはと、缶のリンゴジュースを二本もってきて、ありがたくいただいた。
帰り道、ハヤト兄と2人飲みながら帰る。