第3章 帰りたい場所と描く未来
隣町での音響施設でのバンド練習を終え
再び地元の駅へ降り立つ。
7時までに帰ると、母にいったのに
練習が白熱し、とっくに過ぎてしまった。
ハヤト兄が家に連絡をいれてるから怒られることはない。
クタクタだが、ご飯を食べたら
今度は神社の手伝いをしなくてはならない。。。
駅をでると、黄色いハマーが目の前を通りすぎた。
あんな目立つ車を乗っている人はひとりしかいない。
少し過ぎてから車が止まり運転席からひょっこり出された顔は予想通りの人だった。
『よぅ、神社のせがれと嬢ちゃん』
誰のマネをしているのか、おかしい呼び方でいつもあたしたちを呼ぶ。
おじさんの名前は金石さん。
うちの近所で、大工の仕事をしている。
以前はこの辺一帯の大地主だったのだが、
管理が面倒だ、と安い金額で借りていた人に安く売ってしまったのだ。
一時的にお金は入ったけれど、ハマーを購入したり、家の改築費用にあててお金は飛んでしまったとか。。。
まぁ金石さんらしいことだが。。。
『家まで乗せてくか?』
駅から家までは長い登り坂。
確かに大変だ。でも…
『ありがとうございます。でも商店街を歩いて帰りたいんで遠慮します。』
『そーか、じゃあしゃあねぇなぁ。じゃ、きーつけて帰れよ。』
あたしたちが頭を下げるとハマーは特徴ある音を鳴らしながら坂を登っていった。
あたしとハヤト兄は、また歩きだす。
駅からすぐのところに商店街が並ぶ。
もう7時を過ぎたため、店はほとんど閉店している。しかし、ところどころ半分だけシャッターを閉め中から明かりが漏れている店がある。
中を覗きながら歩いていくと、
祭の準備をしている集団や井戸端会議をしている集団がみえる。
もちろんみんな顔見知りの人たちだが、あたしとたちはみるだけでその場を去っていく。
ただこの光景をみているだけで、心があったかくなる。
今は隣近所の繋がりが薄い世の中だ、というけれど、ここではそんなことはない。
みんな家族みたい、
そういっても過言じゃないくらい
皆互いにおもいあって生きている。