第1章 消えたのも 託された思い*
その後ことは、あまり覚えていない。
ずっと、学校に行かない日が続いた。
食事が喉を通らなかった。
まるで、世界が色を失ったように感じる日々。
あの日の手のぬくもり、あの時の笑い声はまだこの手の中にあった。
認めたくなかった。
現実を見つめたくなかった。
現実を見なければと、立ち入ることのできなかった詠流の部屋に足を入れた。
あの日のまま、なにひとつ変わっていない。
このまま待っていれば、ひょっこりただいまと帰ってきそうな気がした。
机には、模試対策のワークが。
コルクボードには、所狭しとバレーの写真や雑誌の切り抜きが。
あまりにも、夢が詰まりバレーへの思いであふれていて…。
「ごめんね…。」
いつまでも悲しみにくれていること、いつまでも泣いていることをと心の中で付け加えた。
詠流は、そんな日々を送っていることを望まないとわかっていてもどうすることも出来きない自分が情けなかった。
「私が…、詠流を殺して…。夢を奪って…。」
頭の中を巡るのは、自分を責める言葉。
罪悪感と後悔が、身を刺す刄となりココロを抉り取るよう脳裏で繰り返されていく。
囚われ、惑わされていく。
視界が暗くなり、喉を締め上げられる感覚に襲われた。