第6章 最強の味方
「…。」
目線を上げることが、出来なかった。
頭の中は、本当に真っ白となり翔陽のことを思うと悔しさで目尻に涙が溜まる。
「おい、待て影やー。」
田中の制止を無視し、飛雄は依流の胸ぐらを掴む。
「うっ…。は、離し…て…。」
「お前に何がわかんだよっ!この試合に…。俺の、ポジションがかかってんだぞっ!お前みたいな、なんもできねぇ役立たずのチビに何がわかるんだっ!」
「影山っ‼︎そこまでだ。」
菅原は、飛雄の手を掴み下へと下ろさせる。
「げほっ、げほ…。あ、あたし…。」
後ずさりする足を止めるすべが、依流の中にはなくその場から逃げるように体育館を後にした。
ーあたしって…?ー
ふと菅原の、頭をよぎる疑問。
そんな疑問を打ち消すように、時間は過ぎていく。
「そろそろ時間だ。片付けるぞ。」
証拠隠滅作業に没頭したため、ささいな疑問は消えていった。