第6章 最強の味方
そのころ、依流はというと慣れない寒さのためか中々布団から出られなかった。
「ん…、起きないと。」
無理矢理体を起こし、一駅先のスーパーから買った菓子ばんを食べる。
もぐもぐとかじりながら、カバンにシャツやバレーシューズを詰め込む。
スマホで天気を確認し、傘の出番はないらしいので身支度を整え家を出た。
6時丁度、第2体育館へ着いた依流は人影を見つけた。
「よぉ、おはよぅさん。」
「お待たせしまして、すいません。おはようございます。」
菅原は、はぁと白い息を吐く。
「いいって、しかしさみぃな。よし行くべー。」
と、扉をあけひょこと顔を出した。
「おーす。」
扉の開ける音に、びくっと練習中の三人が振り向く。
「スガさんっ、なんで‼︎」
驚きを隠せない田中に対し、菅原は笑顔で答える。
「だっておまえ、昨日明らかにヘンだったじゃん。いつも遅刻ギリギリのくせに、鍵の管理申し出ちゃったりしてさぁ。」
「えっ…、あっ…。くっ…。」
「大丈夫大丈夫、大地には言わない!なーんか秘密特訓みたいでワクワクすんね。あ、ほらほら。詠流も入れよ。」
「は、はい…。」
おずおずと、中に足を踏み入れる。
「お前昨日のー、細っちい奴じゃないですかっ。」
「ど、どーも。」
ー視線が痛い…。影山君、めっちゃ睨んでる。ー
「おい、おまえ一年か?」
「ん、俺?一年だけど。えっとー、影山君?それに日向君だっけ?」
「ぜってぇ、負けねぇから。」
飛雄はそれだけて言うと、いくぞと翔陽に声をかける。
「お、おう。俺、翔陽っていうんだ。よろしくな。」
「おぅ。」
ーこんな雰囲気で、練習とかキツイよ…。ー
「よし、やるべ。詠流、日向もレシーブやってみるぞ。」
「日向君も、初心者?」
「いや、中学でバレー部やってたんだけど…。」
「ほらぁ、時間ないからやっペー。」
菅原の呼び声に、バレーボールを打つ音がリズムよく響き始めた。