第1章 せめてこの日だけは(椎名翼)
前に椎名に言われた。
僕にも責任あるのに、将があんな事になって………名前までいなくなったら、僕はどうすればいいんだよ!、と。
だから、風祭くんがドイツに行く事が決まって、この世界を出ようとしていたのに、出るのを躊躇した。
お前、その見た目で桜上水にいれたんだから、高校も普通にバレないよね?なら、僕と一緒の高校に来るよね?、と。
だから、年齢詐欺っていつの間にか高校に通う事になってしまった。
椎名はいつも強引だ。
だが、椎名が強引だったからこそ、必要もないのにあたしはこの世界に留まっているのだ。
サッカーを通じて世界を見る椎名と、神として世界を見るあたし。
椎名が世界に目を向けている時、椎名があたしと同じものを見ている気がした。
だから、椎名を守りたい、守り続けたいと思った。
あたしがいる事で椎名が世界へ羽ばたけるなら、あたしはまだ、ここにいるべきなのだろうか。
ならば
「今は」
「うん」
「しばらくは、ここにいるよ」
「……サンキュー、名前」
「ほらほら!今日誕生日なんだから、主役が湿っぽい面すんなよ!」
「僕をそんな気にさせたのは、どこのどいつだっけ?自分の行いも分かってないアホがこの部屋にいるみたいだね。そんなアホな奴にはお仕置きしないといけないよねー?」
「え!?冗談だろ?ストップ!ストップ椎名!!」
少なくとも来年は、また隣で祝うよ。
改めて、ハッピーバースデー・椎名!!
END