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短編集【ジャンプ】

第5章 意外な策士(緑川駿)






今までの経験上、緑川があたしにのしかかってくる際、特定される場所はなかったし、周りの人の多さも、一定の人数ではなかった。


どこでも、誰が居ようが居まいが、緑川は背後からのしかかってきた。
むしろ、のしかかってくる以外、何もしなかった。
ただ、「好きだ」という言葉は言っていた。




そして今。
場所は、しばらく使われていない狭いブース。
機器の故障らしく、本部に来たついでに見てくれと頼まれてやって来た。
ブースに入って10秒も経たないうちに、緑川が来たんだ。




その時に気づくべきだったんだ。

場所を問わず、周囲の人数を問わず、いつも同じ行動をとるから、今回も同じであると判断してしまった。
でも、永遠に同じパターンだとは限らない事を、あたしは気づくべきだったんだ。















「やめろ緑川……っ」
「耐えようとする名前さんも可愛いな。だけど、多分ここには誰も来ないよ?」

どんどんエスカレートする緑川。
耳を軽く噛まれ、自分の呼吸が浅くなってくる。
分かってる。この部屋の周辺にさえ、誰の気配もない事くらい。
だが、それ以上に。





















待った甲斐があったな。こんなに可愛い名前さんを見れるなんて。


















不意に読んじまった心の声に、己の推理の正しさを痛感させられた。

緑川は、同じ行動を取り続けた。
あたしが警戒しなくなるまで。


はじめから、こいつの策に嵌められていたんだ。

















首まで降りてくる唇。
力の抜けてくるあたしの体。
そして、囁かれる緑川の言葉。


「愛してるよ、名前さん」



























A級迅バカが、策士だなんて思ってもいなかった。




どうにかして、抜け出さなければ。




END


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