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シンデレラと白雪姫

第1章 Another World


その横で外商の担当さんに出すお茶菓子の用意もしておく。どうせ後でやらなきゃいけないことだ。
本当は今独学で勉強している化学の続きが気になって仕方なかった。有機化学の構造決定問題が大好物の彼女の頭の中は、パスタソースを作りながらもアニリンだとか安息香酸だとかアセチルサリチル酸、グルコース、セロビオース、などなど化学物質が渦巻いているのであった。
台所にあるボタンのうち右端を押す。
これで全員の部屋にご飯ができました、という通達が行くんだとか。
その他のボタンは、お風呂が沸きましたとか、お客様ですなど5種類に渡る。実はこれ、高校生の弟が勝手に設置したものであるが継母が面白がって使用許可を下ろした。

お皿をサーブしているときに妹が口を開いた。
「ママ、定期考査の結果表です」
そう言って高校に通う妹が継母に成績個票を差し出した。英語185 数学200 物理85 化学100 生物75 国語147 社会80
「S大行きたいなら国語と社会をちゃんと伸ばしなさい。どこで落としたの?」
「推薦欲しいなら評定4.3以上必要なんだから選択しない生物ももう少し欲しいわね。」
と継母の辛口コメントがつづく。実はこの子はこの家の希望の星。唯一まともなのだ。長女は私立短大。長男は私立薬科大学。次男は私立高校生。次女の在籍校は私立高校だが中高一貫の進学校なのである。
私が今使っている化学の教科書は彼女が使用済みとして廃棄していたのを拝借してきたのだ。

「でも、よくやってるわ。次も頑張りなさいな。」
こくん、と妹は頷いた。弟とはよく似ている。さすがは双子と言うべきなのもしれない。


外商で色んなものをしこたま買い込んで継母は書斎へと戻った。
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