第8章 飛び立つ翼の美しさ
後日、承太郎、花京院、の三名は留学という形でアメリカにわたることになった。
承太郎は長い事母親を一人にさせてしまうと心配だったようだが、大丈夫よと言ってくれ、家に母親を置いてアメリカへ向かう。
花京院も両親には心配をかけると思っていたが、あまり気にしてもいなかったようで楽しんで来いとそれだけ言われて家から出た。
には声をかける親戚や家族がいないと考え、黙って荷造りをし、黙って家を出て来た。
頼るのは承太郎の祖父の知り合いがいるというSPW財団だった。表向きは医療関係だとうことだったが、には詳しく説明されていない。
「…本当に、よかったの?」
は飛行機に乗る直前に承太郎と花京院に問いかけた。二人は顔を見合わせて大きくうなずく。
「…ごめんなさい」
「花京院、アメリカ、楽しみだな」
「ああ、知らない土地に行くっていうのは実にワクワクするよ、そうは思わないかい?」
見事に話をそらされ苦笑したはそうだね、といって飛行機に乗り込んだ。
見送ってくれたのは承太郎の母親、花京院の家族だけだった。学校関係者は一人もおらず、難なく飛び立った飛行機のなかでは外を見ていた。
酷く捻挫をした足はまだ痛むが松葉杖があれば歩ける、折ってしまった腕は今は固定しており思うように動かすことができない、頭に巻いていた包帯はガーゼに取り換えられ簡単にはりなおすことができるようになった。
「」
「…?」
隣に座っていた花京院が声をかける。
「…後悔してるかい?」
「全然」
はすっきりとした笑顔でそう言った。
「もう、あの人たちの顔を見ないで済むって考えると、いい気分」