第1章 私は、武田奏依です。
「姫様!起きる時間でございます!」
「…んぅ……後5分…寝かせて……」
「奏依、そろそろ起きんか。十分寝かせたろう。」
「…父上…。…わかりました……でも後3分は寝かせてください……」
「〜!いい加減、起きろと言っているだろう!この、バカ娘が!」
…みっともない姿をお見せしてしまいましたね。
こんな登場の仕方で申し訳ございません。
私は、武田奏依でございます。
武田家の一人娘です。
「お館様、そこまで怒らなくてもよかろうかと…」
「なんじゃ幸村。ワシに口答えするつもりか?」
「っ!も、申し訳ありませぬ!」
「がっはっは!なぁに、冗談じゃ。
ワシもちと言い過ぎたな。奏依、早う顔を洗って身支度を整えてきなさい。」
「あ、はいっ。」
朝からお叱りを受け、気分が上がらないまま顔を冷たい真水で洗い、いつものところへと戻っていく。
「奏依殿、あ、あの……」
その途中で幸村に呼び止められ、振り向く。
「??
どうかいたしましたか?」
「いや、やはり何もありませぬ。」
この時に、もう少し周囲に警戒しておいた方が良かった、というのは知る由もなかった。