第4章 好きなもんは好きなんだ(こちらとしては余り嬉しくない)
あぁ、これダメなパターンだよい。心の中の俺が、呟く。
「いいじゃねぇか。連れていきゃあ」
「ンな軽く言うなよい。親父にどやされるよい」
「でぇーじょうぶだろ。こんな別嬪な嫁さん貰いましたっつてぇ連れてきゃ、親父も大満足さ」
そう言って、イゾウは村の娘1号を引き寄せた。
ん?おい、待て待て!
「ソイツも連れて行く気かい⁉︎」
「当たり前だろ。俺はコイツが気に入った。ちょうど船医探してたし、誰も文句は言わねぇさ」
「文句はこっちにあるんだけど。そもそもなまえは馬鹿だし、戦えもしない。そんな子連れてっちゃ、足手まといだろ」
眉間に皺を寄せながら、村の娘1号もといなまえの姉・ミフネはイゾウの腕を振り解きながら、心底嫌そうに呟いた。しかしイゾウはそんなの、まったく気にする様子は見せない。
あぁ、やっぱりこれ、ダメなパターンよい。再度、心の中の俺が呟いた。
「おい、妹。テメェ、何が出来る?」
「家事全般はなんでもござれですよ!」
「よし、採用!じゃ、行くぞ、マルコ!」
「おー!」
「オメェが返事するなよい……」
こうしてイゾウはミフネを担ぎながら、俺はなまえにほぼ引きずられながら、モビー・ディック号に帰って来た。
最後の望みであった親父も、ただ愉快そうにグラグラ笑っただけだった。