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3つの恋のはなし

第4章 好きなもんは好きなんだ(こちらとしては余り嬉しくない)


 物資の調達(と言っても、食えそうな果物を探すだけだが)のため俺とイゾウがこの島に降り立ったのはいいのだが、いかせん船の上での生活が長すぎた。雨で濡れた地面は泥濘、それに慣れていない俺たちは恥ずかしい話、見事に横転。挙げ句の果てイゾウが頭を打って怪我するという、赤っ恥でしかない、笑い話にもならないことが起こった。そこへ現れたのが、例の馬鹿女・なまえだ。
 なまえは俺を見るなり、黄色い叫び声を上げ、突進するかのごとく俺に抱きついて来た。そしていけしゃあしゃあと、タイプだのなんなのとうるさく喋りまくった後、怪我したイゾウを見て治療のため村まで案内してくれた。はいいが、姉が切り盛りする病院(他の家と作りは変わらないように見えた)に入るなり、勝手に俺の腕を組んで「彼氏が出来ました!」なんて言うもんだから、馬鹿にもほどがあると思う。まぁ、コイツの姉が代弁してくれたけどよい。
 そんな感じで話は戻るのだが、コイツいい加減腕を放してくれねェかねい?いい加減ブチ切れるぞい、コラ!
「なまえ。その一目惚れした野郎を勝手に彼氏にする癖、治しなよ」
「またはた迷惑な癖だねぃ」
「め、迷惑とは失礼な!私は本当に好きになったんです!だから、貴方にどこまでも付いて行きますよ‼︎」
「いや、ガチで迷惑なんで、結構ですよい」
 胸の前でいやいや、と手を振るもなまえはむくれるだけで、身を引く気配がない。コイツ、なかなか強情だない。つーか、イゾウも見えねぇで助けろよい!
 そろそろ本気でぶん殴ってやろうかと思えてきた頃、クツクツといやーな笑みを浮かべながら、イゾウが口を開いた。
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