• テキストサイズ

3つの恋のはなし

第3章 一目惚れの概念とは


「おい、サッチ。冥界の人魚って知ってるか?」
 気分よく酒を飲んでいた男にそう問われ、俺は首を横に振った。男はさらに酒を仰ぎながら、話を続ける。
「こんなに霧の濃い日になぁ、突然、歌声が聞こえて来るんだ。そして、次の瞬間!急に船が揺れたかと思うと、バーン!と空高く船ごと投げられる」
 空になった酒瓶を、男が投げた。
 クルクルと酒瓶は回り、重力に従い甲板へ向かう。そしてガチャン!寂しい音を立てて、粉々に砕け散った。
「そして最後はこんな風に、海に叩きつけられて、みんな死んじまうのさ」
「人魚、出てこねぇじゃん」
「それがいるんだよ!空から落ちてくる時、海を見んだろ?そこにひょこりと顔を出してんのさ。美しい、人魚がよ……」
「ふ〜ん……」
 興味無さ気に返事を返しているが、実は内心ドキドキしまくっている。あ、別に怖いわけじゃないからな!ただ今の状況とさっきの話が、あまりにも似ているから……。そう、思った瞬間。
 突然聞こえてきた歌声に、俺は息を飲んだ。
「な、なぁ、これって……」
「冥界の、人魚……?」
 グラリ。急に船が揺れ、凄まじい音を立てて、船ごと天空へと舞い上がった。
 船に乗っていた男たちが叫び声を上げて、船にしがみ付く。だかそれも虚しく、俺たちは重力に従い海へと落ちて行った。
/ 8ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp