第8章 晴れの日の雨
トン、
ペラ、
トン、
静かな執務室には印押しと紙をめくる音だけがリズムよく響いていた
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『判子』
「はいはい」
『これも』
「…はいはい…はぁ…」
『なに?』
「…いやぁ…せっかく二人で居るのになぁと思って…」
火影補佐として働く晴はこうして四六時中カカシと共にいる
『誰かさんの企み通り、いつも二人でいるでしょ……と言うか、あんたがそんなんだから周りが気を使ってあまり部屋に入ってこないんだ…』
「…わかってるなら皆の気遣いを無駄にしないためにも、もう少し俺に優しく接してくれても良いんじゃない?」
『私がいれば火影がサボらず仕事が進むからってゆうのもあるの!私は皆の期待には応えてるつもり』
「はぁ…」
もはやこの手の会話にも慣れた…
以前から気づいてはいたが、極度の恥ずかしがり屋だった
気持ちは通じたはずなのだが…
カカシは溜め息を飲み込んで仕事に専念する
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『おわった?』
「あぁ、待たせたね」
二人は住む家も同じだが、出勤、仕事、帰宅、本当にいつも一緒に過ごしている
離れるのはトイレと風呂くらいか…
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帰宅途中
『夕飯たべてかない?』と言う彼女の提案で行きつけの店に行くことになった
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「あれ、珍しいね…」
『別に良いでしょ、私も大人なんだから』
そう言ってコップの中の液体をグイッと飲み干す晴
「なんかあったの?」
『…私がお酒を飲むのがそんなに不思議?』
「…一緒にいて暫くになるけど、飲んでるところなんて見なかったからさ」
『私は任務から戻る度、酒豪の紅に付き合わされて生きてきたの』
「…よく生きてこれたね」
紅の酒豪っぷりはアスマからもよく聞かされていた、そんな彼女に付き合わされれば嫌でも飲めるようになるのだろう…
酔った紅に絡まれる彼女の姿が頭に浮かび、カカシは苦笑いを浮かべるしかないのだった
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