第3章 終わり
ヒロインを人質に捕られ、どうすることも出来ない。
下「さぁ、何をしている。早く霊毛ちゃんちゃんこを解け。」
解いてしまえば、逃げられる。
だが、彼女を見捨てることは出来なかった。
鬼「分かった。今、解いてやる。」
?「いや、その必要はないよ。」
下「またお前か!!」
天井裏から顔を出した何者かは長い舌で天井下の髪を切った。
鬼太郎はヒロインが解放されたのを確認し、安堵の溜息を漏らす。
鬼「助かったよ。天井嘗。」
そう、助けてくれたのは天井嘗だったのだ。
嘗「僕を疑うなんて最悪の気分だったけどね。」
鬼「ごめんごめん。・・・さて。」
月明かりが鬼太郎を照らした。
怒りに満ちた表情をはっきりと見た天井下の顔は真っ青である。
下「ゆっ許してくれぇ!!」
先ほどの強気は失せていた。
鬼「何故、こんなことを?」
下「にっ人間共が勝手に棲み処を荒らしたんだ!その上、直しもしねぇ!!俺は悪くねぇ!!!」
棲み処とはもちろん天井のことだ。
確かに見上げれば大きな穴。
これでは怒るのも当然である。
鬼「君の気持ちは分かった・・・だけど、もうこんなことはしないと約束してくれるね?」
下「はいぃぃぃぃ」
ヒロインに目をやると、彼女は体育座りで怯えていた。
鬼「もう大丈夫だよ。」
鬼太郎が手を差し出すも何の反応もない。
仕方がなく、抱き寄せ立たせてやるとやっと彼女は冷静さを取り戻した。
ヒロイン「あっ・・・ごめんなさい。」
少し恥ずかしそうである。
そんな彼女の姿にネコ娘は嫉妬を抱くが、表には出さないようにした。
鬼「今回は人間にも非はあるよ。きちんと先生方に言って直して欲しい。」
ヒロイン「はい。」
俯く彼女に鬼太郎は微笑み言った。
鬼「だけど、君が悪いわけじゃない。また何かあったら僕を呼んで。いつでも助けに来るよ。」
ヒロイン「はい!」
その後、捕まっていた生徒と先生は無事に帰ってきたが、誰一人として何が起こったのか記憶はない。
それは、新聞でも大きく取り上げられた。
結局何だったのかという疑問が世間を騒がせたが、すぐにそんなことも忘れられ、いつもの日常が戻りつつある。
ただ一人の少女はその答えを知りながら、胸の奥底に隠し何一つ語ることはなかった。