第8章 親子
そして、杲良は兄である剛也の事が嫌いみたいだ。
「剛也様は、とても信頼できる方です。侮辱するならば、剛也様の弟はいえど、斬りますが…?」
賢次は、冷ややかな瞳で杲良を睨み付ける。既に、手は刀を握っていた。それを見た杲良は、ゴクリと唾液を呑み込む。
賢次は、本気だった。光瑠は、止めろ…と溜息混じりながら賢次に向かって言う。賢次は、ゆっくりと刀から手を放す。
「失礼致しました。」
ペコッと頭を下げる賢次。杲良は、チッ…と舌打ちをして最後に飲み物を飲み干し、リビングから出て行った。
「叔父様には、困りましたね。」
柚姫は、最後の一口を食べ終えそんな事を苦笑の表情を浮かべて言い出す。
「ねぇ、柚姫ちゃん。その結界を直すって事は出来ないかしら?」
実渕は、柚姫に質問をする。柚姫は、手を顎に持っていきう~ん、と唸り声を僅かにあげる。
やがて、柚姫は困惑した顔をして首を左右に振る。柚姫の判断では、街に覆っている結界を直す事は無理みたいだ。
「なんで、無理なんだよ?」
火神は、納得しないのか理由を聞きたがるのだ。隣にいた黒子は、火神に向かってアホですか?と呟くように言う。
その言葉に、激しく反応する火神はなんだと!?と喧嘩を売る体勢になった。
「考えてみて下さい。この街の広さで結界を直すということは、恐らく時間が掛かります。ましてや、柚姫さんの負担も考えて下さい。」
「正論だ、黒子。更に言えば、あの結界を一度壊す必要がある。」